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喫茶店の朝

数日の休みを取って単身赴任先から帰ってきていた夫を早朝、小牧空港まで送っていく途中。ちょっと早く出過ぎたので、どこか喫茶店に寄ってコーヒーでも飲もうということになった。

繊維が栄えていた頃に全国から女工さんが集まっていたせいで、昔から喫茶店(カフェではない)の多いこの地方だが、空港の近くにはあまり手頃なところがなく、『ホワイトベア』という、入り口にでっかいシロクマの剥製が飾ってある30年以上前からやっていそうな広めの喫茶店に入った。

朝7時。6時半からの営業で4割方席が埋まっている。全員老人。連れの人と来ている人もあれば、一人の人もあり。一瞬、老人ホームの食堂に入ったような気分になった。

コーヒーにモーニングサービスがついてきた。尾張地方の喫茶店はモーニングセットがわりと豪華なことで知られているが、こういうのは初めて見た。

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トースト、コーヒー、サラダ、ゆで卵、フルーツの定番メニューに、味噌汁と巻き寿司と薄いハンバーグみたいなのがついている。

これはどういう順番で食べたらいいのかと考えた末、味噌汁と巻き寿司を一緒に食べてから、サラダとハンバーグもどきを食べ、最後にコーヒーを飲みながらトーストと卵を食べた。お腹いっぱいになった。

早朝からここに来る老人たちの、コーヒーも飲みたいが味噌汁も欲しいという需要に応えた内容なのだろう。そう言えば、おにぎりと茶碗蒸しとか、ミニうどんが付いてくるところもあるという話を昔聞いた。

この地方で喫茶店に来るのは老人ばかりである。

帰りがけにチラッと見たら、厨房で60代くらいの女性が二人働いていた。ますます施設の趣。レジの横で、巻き寿司のパックと炊き込み御飯のパックを売っていた。スーパーも兼ねている。

朝は目が早く醒めてしまう一人暮らしの老人。お腹を満たしたいが、一人では侘しい。それで人の気配のある喫茶店に来る。知り合いにも会えるし、雑誌も読める。温かい味噌汁も飲めるし、食後のコーヒーも出る。ついでに今日の昼飯も買えるから便利。

地方の町の孤独な老人たちの生活の一部を、古い喫茶店が支えているという図。カフェではこういうことはない。

編集部より:この記事は    2014年11月4日「Ohnoblog2」様の投稿を転載させていただきました。