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(報われぬ国)都会が吸い込む高齢者 呼び寄せ移住

ビジネスセンターなどが立ち並ぶ千葉市の「幕張ベイタウン」。そのなかのマンション群の一角に、3階建てのサービス付き高齢者住宅(サ高住)がある。

「住めば都と思って、ここで生きていこうとね」。その一室に住む大薗佐代子さん(73)は手芸の手を休めて、窓の外を眺めた。

夫の菊雄さん(74)とともに、長年住んだ福岡県大野城市から移って半年がたつ。部屋にはベッド二つと小さなソファ。ほかに台所と洗面所、トイレがある約25平方メートルがついのすみかだ。入居58人のうち、北海道や秋田、石川、兵庫、福岡など地方から移ってきた高齢者が2割を占める。

近くのマンションに住む長男の穂積さん(51)からずっと誘われていたが、気が進まなかった。「近所に友達もいるし、いまさら知らない所に行くのもねえ」。だが、菊雄さんが心臓を手術し、佐代子さんも脳梗塞(こうそく)で倒れたため、昨年秋、穂積さんに引っ張られるようにして出てきた。

「離れていては何もできない。病院にずっとはいられないし、自宅に戻っても2人とも介護が要る。車がないと何もできない場所に老夫婦だけ置いておけない」。穂積さんは言う。

 自宅がある大野城市の住宅地には、一戸建て住宅が並ぶ。だが、この数年はくしの歯が欠けるように空き家が増えていく。

2月のある日、坂道を買い物袋を両手に提げた女性(78)が上っていた。バス停から自宅までは70~80メートル。「年々、長く感じられて」と、一息いれる。

「年寄りロード」。地元でそう呼ばれる県道沿いには、2キロほどの間に老人ホームなどの施設が4、5棟並ぶ。だが、費用が安い特別養護老人ホームは「だいたい1年待ち。地元を離れるお年寄りはどんどん増えるだろう」。ある施設の職員は言う。

幕張ベイタウンのサ高住には、こうした地方から高齢者が移り住んでくる。

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編集部より:この記事は 朝日新聞デジタル 西井泰之、平林大輔 様の2014/03/09の投稿を転載させていただきました。